「マンモスを再生せよ」ベン・メズリック著 上野元美訳
3000年前に絶滅したマンモスを最先端の遺伝子操作で再生させるという「ジュラシック・パーク」のようなプロジェクトが実際に進行している。本書はこの驚くべきプロジェクトの全貌に迫ったノンフィクション。
主役は、ハーバード大学医学部教授のジョージ・チャーチ。ヒトゲノム計画やマラリア撲滅運動、遺伝子移植による老化の逆行といった科学研究に携わり、マンモス再生計画チームを率いる。チャーチの背中を押したのがロシアの生態学者、セルゲイ・ジモフだ。ジモフは、シベリアの永久凍土の融解による二酸化炭素とメタンの大量放出による地球温暖化を防ぐべく、北極圏に「氷河期パーク」を造り、そこで大型草食動物が地面を踏み荒らせば地表温度を下げられると主張。これを知ったチャーチは、マンモスを再生して氷河期パークに放つことを計画する。
こうして始まったプロジェクトには世界中の知性が集まり着々と進行しているという。科学の進歩の素晴らしさと危惧の両面を伝えてくれる。
(文藝春秋 2000円+税)