「悪態の科学」エマ・バーン著 黒木章人訳
世界には多様な言語があるが、疎密はあるにせよ、いずれにも悪態や罵倒語が存在し、変化を遂げながら現在も使われている。となれば、悪態・罵倒語が存在する何かしらの理由があるはずだ。「悪態・罵倒語や汚い言葉の伝道師」を自任するロボット工学者の著者は、その効用と重要性を神経科学、言語学、行動心理学などさまざまな面から解き明かしていく。
氷水に手を突っ込みどれほど耐えられるかという実験で、「ちくしょう」「クソッたれ」などの罵倒語を言うのと言わないのとでは、言う方が1・5倍の時間耐えられたという。手話による言語学習を行っているチンパンジーは、排泄行為を示す手話に特別な意味を持たせ、その言葉を感情的になったときに使うようになった。さらには失語症患者が罵倒語だけは忘れないなどの事例が挙げられていく。
その他、ジェンダーや国による使い方の違いなど、これまで知られることのなかったタブー語に新たな光を当てた、悪態・罵倒語の百科全書。
(原書房 2200円+税)