日常生活では使えない!? 面白ことわざ
「本当にある!変なことわざ図鑑」 森山晋平/文 角裕美/イラスト
「挨拶より円札」ということわざをご存じだろうか。明治時代になってから生まれたことわざで、「円札」とは1円札のこと。その意は、「言葉でのお礼より、お金など実際に役立つものの方がありがたい」という何ともストレートなもの。まるで、ひと昔前に流行した「同情するならカネをくれ」というドラマの決めゼリフを彷彿させる。
「炎上」が恐ろしくて、使うには勇気がいるが、ほかにも「思し召しより米の飯」(思し召し=好意・思いやり)などの類句もあるくらいだから、やはりことわざには人間の本音が詰まっているようだ。
日常生活では、使うのに躊躇してしまうが、先人たちの知恵が詰まったそんな「変なことわざ」が満載のイラスト図鑑。
「あんころ餅で尻をたたかれる」「蛙におんばこ」「酒買って尻切られる」「海鼠の油揚げを食う」「蛞蝓の江戸行き」など。
一読しただけでは、いや何度読んでもよく分からない変なことわざを357句も収録。
ちなみに、その意はというと、「あんころ餅――」=もちで尻を叩かれる状況を「幸運」と考え、「予想外の幸運がやってくる」。「蛙に――」=カエルにオオバコの葉をかぶせると生き返るという迷信が由来で「薬がよく効く」。「酒買って――」=酒を買ってもてなしたのに、酔っぱらった相手に尻を切られてしまうことを表し「好意でやってあげたのに、逆に損をさせられる」。「海鼠の――」=ただでさえヌルヌルしているナマコなのに、油で揚げられたら、より口が滑るということから「口がよく回る」。そして「蛞蝓の――」=「蛞蝓の京参り」ともいい、「ものごとがなかなか進まない」。
なるほどと納得したり、こじつけにしか思えなかったり、その意味や成り立ちを読んでいるだけで楽しい。
(プレジデント社 1200円+税)