「パリ、ただよう花」ロウ・イエ監督
「草食系? 初めて聞きました(笑い)。なるほど、花の中国人の恋人は草食系かもしれません。一方、花は性欲旺盛という意味での肉食系かというと、そうでもないんです。花はインテリで教師で、きちんと理性で自分をコントロールしてきた女性です。ところがマチュー(タハール・ラヒム)という建設工に出会い、原初的な欲望を自分に見いだす。そして、より肉体的なもの、性的なものを求めるようになっていってしまうのです。理性では制御できない衝動ですから当然、花の心に矛盾が生じ、葛藤するんですね」
■監督は国や法律などで規制されてはいけない
――ベッドシーンでのヒロインの表情、肌、汗まで艶めかしい。
「実は日本のロマンポルノで勉強させてもらったんです。撮影前に何本も見て、とりわけ影響を受けたのが神代辰巳監督。狭い密室での絡みのシーンを演出する際は、とても参考になりました」
――中国当局から睨まれながらも、創作を続ける原動力は?
「人間を描きたい、時代を撮りたいということに尽きますね。『天安門、恋人たち』で5年間の処分を受けたときは、表現の自由を脅かされ、心底腹が立ちました。ただ、そのことによって中国の検閲制度を世界に知らしめることができたし、映画監督は決して国や法律などで規制されるべきものじゃない。ベルトルッチ監督の『ラストタンゴ・イン・パリ』のように、さまざまな監督がパリを舞台に愛を描いてきました。今作では私の描く愛の形を感じていただきたいと思います」