東宝にひさびさ一矢 松竹「白ゆき姫殺人事件」ヒットの理由
松竹が久しぶりに映画分野で一矢を報いた。製作・配給した「白ゆき姫殺人事件」が、関西テレビなどが製作した東宝配給の「チーム・バチスタFINAL ケルベロスの肖像」をスタートの興行成績で上回ったのである。
それほど大きな差ではないが、東宝の独壇場が続く映画界で、これは珍しい。「白ゆき姫」は松竹企画の作品。「チーム・バチスタ」は人気テレビの映画化で、本来なら知名度、宣伝面の有利さなどで圧倒的に優位で、ヒットの可能性が大きかったから意外である。
「白ゆき姫」は湊かなえの同名のサスペンス小説の映画化。「告白」の大ヒットから、彼女の小説は映画やドラマで引っ張りだこになったが、その人気ぶりが今回の好調さにつながったとみていい。若者から年配者まで、幅広い客層になっている。
■井上真央と綾野剛の起用も功奏
現代の複雑な家族や人間関係を、サスペンスの土壌で描くことで定評のあるのが湊かなえの作風だ。彼女は「白ゆき姫」でも、ネットにおける中傷やマスコミ報道の行き過ぎなどの社会問題に踏み込んでいる。このような“考えさせる”サスペンス劇に観客の関心は一段と膨らんだようだ。