池上季実子がドラマを憂う 「最近は深みある物語が少ない」
「男女7人」は私に大きな変化をもたらした
少し前からフェイスブックを始めたのですが、面白いことが分かったんです。皆さん、私に対するイメージはご覧になった作品によって違うんだなって。多くのドラマや映画、舞台に出させていただいていますが、その中でも「男女7人」は別格(笑い)。私自身にとってもドラマ「熱中時代」(78年)、映画「陽暉楼」と並んで大きな変化をもたらした作品です。
皆さんに愛していただいた浅倉千明。実は、プライベートの私とも重なる部分が多い役でもありました。マーケットディーラーとしてバリバリ仕事をこなし、周囲から一目置かれる存在であった彼女は家族との間に問題を抱え、過去の自分の行動を悔いているという側面も持った女性。そんな千明が妹役の大沢逸美ちゃんに「お姉ちゃんだけ、先に家を出ちゃってごめんね」と謝るシーンがあったのです。これには、もう、ゾクッとしました。私も一緒だったからです。両親が不仲の環境に耐えられず、家を飛び出してしまった。私の場合はひとつ年下の弟を残して……。ドラマのセリフは私が弟にいったものとそっくり同じで、誰にも明かしたことがなかったのに「鎌田さん、なんで知ってるの!?」って。脚本の鎌田敏夫さんとは、それまでお目にかかったことが一度もありませんでしたから、私という人間が“丸裸”にされたような気分に……(苦笑い)。
でも、男女7人のメンバーはみんな自分と重なる部分、思い当たるシーンがあったようですよ。そのことでさんまさんやしのぶさんらと一緒に盛り上がったのを覚えています。
役者は不思議な仕事。何が起こるか分からないところが面白かったりする。今後も皆さんのあらゆる想像(!)をかき立てる芝居をお届けしたいですね。
▽いけがみ・きみこ 1959年米NY生まれ、京都で育った。15歳の時、NHKドラマ「まぼろしのペンフレンド」でデビュー。「陽暉楼」(84年)で日本アカデミー賞主演女優賞、「華の乱」(89年)で同助演女優賞を受賞。9月から舞台「友情~秋桜のバラード~」の全国ツアーに出演。7月、自身初のエッセー「向き合う力」(講談社現代新書)を上梓。