「鉈の先に剃刀」 石丸謙二郎が語るつかこうへいの凄み
「おまえはもう来なくていい!」
稽古場に、つかこうへいさん(享年62)の怒鳴り声が響き渡りました。「えっ?」ときょとんとしていたら、「おまえがいるなら俺が帰る!」。
こう言い残して、つかさんはサッサと帰っていったんです。残された劇団員や、役者、スタッフは呆然……。
今から36年前の1979年2月3日。5日後、つかさん原作・脚本の「いつも心に太陽を」(のちに「ロマンス」に改題)の西武劇場(現PARCO劇場)での舞台の初日が迫ってる時でした。
翌日、暗い気持ちを奮い立たせて稽古場に行ったものの、稽古に参加するわけにもいかず、そっと陰から見てました。そうしたら、翌日かその次の日だったかに稽古参加の許しを得て、ようやく舞台に出ることができたのですが、なぜ追い出されたのかよく理解できません。
後日、ようやくわかりました。それは稽古時に僕が風邪をひいたからです。「大事な本番直前に風邪なんてもっての外」「たるんでいる」「他の出演者にうつったら、どうするんだ」――。