ボブ・ディラン「風に吹かれて」の問いかけは現代に必要

公開日: 更新日:

 彼らしいといえば彼らしい。歌で世界を塗り替え、現在に至る歌のあり方において彼ほど影響を及ぼした人はいない。それでも、「自分がやらなくても、誰かがやっていた」と、驕ることなく独自の道を歩み続けた。歌には、どんな規則もない、どんなことを歌ってもいい。大切なことだと思えば、世間が顔を背けるようなことでも平気で歌にした。

 韻を踏ませ、暗喩を含ませ、文字通り「新たな詩的表現」で、歌に深みや広がりをもたらした。そうすることで、歌詞は詩となり、詩は歌になった。声に出し、唇にのせることで、書物の中に畏まっていた言葉たちを、リズムが躍る新しい世界へと導いた。

「風に吹かれて」は、反戦歌だから歓迎されたわけではない。ましてや、それが書かれた過去に縛られているわけでもない。「どれほど人が死んだら、余りにも死に過ぎたと気づくのだろう」。その問いかけを必要としているのは、むしろ、漠然とだが、心のどこかに不安や混乱を抱えざるをえないような現代ではないか。

「歌は軽い娯楽ではなく、もっと重要なものだった」。今回の授賞が、ディランと同じ志を共有しながら言葉と向き合い、歌い、演奏するようになった人たちに、どれほどの励みになったかと思う。時には、自らの醜さや卑しさに気づかされたりしながら、彼の歌とともに人生を歩み続けてきた人たちにとっても、むろん、それは同じことだ。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  2. 2

    中居正広の女性トラブルで元女優・若林志穂さん怒り再燃!大物ミュージシャン「N」に向けられる《私は一歩も引きません》宣言

  3. 3

    中居正広はテレビ界でも浮いていた?「松本人志×霜月るな」のような“応援団”不在の深刻度

  4. 4

    中居正広「女性トラブル」フジは編成幹部の“上納”即否定の初動ミス…新告発、株主激怒の絶体絶命

  5. 5

    中居正広の騒動拡大で木村拓哉ファンから聞こえるホンネ…「キムタクと他の4人、大きな差が付いたねぇ」などの声相次ぐ

  1. 6

    木村拓哉は《SMAPで一番まとも》中居正広の大炎上と年末年始特番での好印象で評価逆転

  2. 7

    中居正広9000万円女性トラブル“上納疑惑”否定できず…視聴者を置き去りにするフジテレビの大罪

  3. 8

    中居正広「女性トラブル」に爆笑問題・太田光が“火に油”…フジは幹部のアテンド否定も被害女性は怒り心頭

  4. 9

    中居正広が払った“法外示談金”9000万円の内訳は?…民放聞き取り調査で降板、打ち切りが濃厚に

  5. 10

    中居謝罪も“アテンド疑惑”フジテレビに苦情殺到…「会見すべき」視聴者の声に同社の回答は?

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人が戦々恐々…有能スコアラーがひっそり中日に移籍していた!頭脳&膨大なデータが丸ごと流出

  2. 2

    【箱根駅伝】なぜ青学大は連覇を果たし、本命の国学院は負けたのか…水面下で起きていた大誤算

  3. 3

    フジテレビの内部告発者? Xに突如現れ姿を消した「バットマンビギンズ」の生々しい投稿の中身

  4. 4

    フジテレビで常態化していた女子アナ“上納”接待…プロデューサーによるホステス扱いは日常茶飯事

  5. 5

    中居正広はテレビ界でも浮いていた?「松本人志×霜月るな」のような“応援団”不在の深刻度

  1. 6

    中居正広「女性トラブル」フジは編成幹部の“上納”即否定の初動ミス…新告発、株主激怒の絶体絶命

  2. 7

    佐々木朗希にメジャーを確約しない最終候補3球団の「魂胆」…フルに起用する必要はどこにもない

  3. 8

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  4. 9

    フジテレビ「社内特別調査チーム」設置を緊急会見で説明か…“座長”は港社長という衝撃情報も

  5. 10

    中居正広「女性トラブル」に爆笑問題・太田光が“火に油”…フジは幹部のアテンド否定も被害女性は怒り心頭