地元広島放送局が取り上げた「被爆死」「圧焼死」の実態
鎮魂の8月。今年もまた何本もの終戦特集が放送されたが、6日のNHKスペシャル「原爆死~ヒロシマ 72年目の真実~」は、地元の広島放送局による力作だった。
広島市が、昭和20年8月6日から現在まで続けてきた「原爆被爆者動態調査」がある。それは55万もの人たちが、どこで、どのように被災したのかを知る貴重な手掛かりであり、他に類を見ない「戦災ビッグデータ」だ。
番組では、被災者ひとりひとりの死亡日、場所、死因、火災の状況、気象、原爆の絵、そして取材情報などを航空写真と重ねていく。すると、被災者がどのように命を奪われていったのかが浮かび上がってきた。「原爆による死」の可視化だ。思わず息をのむのは、倒壊した建物の下敷きとなり、生きながら焼かれる「圧焼死」の実態だ。
当時16歳の女学生だった女性は、級友の助けを求める声を聞きながらも、迫る火災の炎に追われて置き去りにしたことを悔やみ続けていた。また即死を免れたものの原爆特有のやけどで命を奪われた人や、放射能を帯びた粉塵を吸い込んで内部被ばくした人など、解明されずにきた「原爆死」の多さに驚く。
長引く苦痛をもたらす爆弾として、軍事目的より一般市民を苦しめる効果をもっていた原爆。番組が伝えた新事実をどう受けとめ、生かしていくかは私たち次第だ。合掌。