業界団体は抗議も 「ブラックペアン」ドラマ的演出の是非
これまで心臓手術用機器「スナイプ」が物語の軸だった「ブラックペアン」(TBS系)だが、新たに内視鏡手術支援ロボット「ダーウイン」が登場した。こうした最新機器を使った手術でトラブルが発生し、患者の命が危うくなった時、主人公の渡海征司郎(二宮和也)が現われ、その腕を振るうのがこのドラマのパターンだ。
また渡海が時々眺める1枚のレントゲン写真がある。そこに映っている手術器具「ペアン」には、師事する佐伯教授(内野聖陽)と渡海の亡くなった父親との因縁と秘密がある。この謎からくる鬱屈を含め、二宮は渡海の人物像を大胆かつ繊細に表現しており大健闘だ。
ところで最近、ドラマの中の治験コーディネーターに関して日本臨床薬理学会から抗議があった。医師を高級レストランで接待する場面や、被験者に渡す高額の負担軽減費などが「実像からかけ離れている」というのだ。
しかし、このドラマは不可能を可能にする手術などダイナミックな展開で楽しませるエンターテインメント作品である。加藤綾子が演じる治験コーディネーターのキャラクターや仕事ぶりに、他の登場人物と同様、ドラマ的な演出や味付けが施されているのは当然だ。
物語全体がドラマというフィクションであり、現実に沿った内容に終始するのであれば、医療ドラマだけでなく、刑事ドラマも弁護士ドラマも成立しなくなる。