渡辺プロ<1>芸能ビジネスの原型つくった渡辺晋の創業理念
「歌手のギャラの一部を社長は密かに貯金して将来に備えていた。さらに、都内には事務所が土地を購入。家を建てたい幹部や歌手に土地を提供していた。一時、ナベプロの人が多く住んでいた地区もあった」(元スタッフ)
実際、沢田研二宅の取材で近所の聞き込みをすると、どの家も一様に口が堅い。後に家主はどこもナベプロの人たちばかりと判明。取材の中身まで事務所に筒抜けだった。
マネジャー業も厳しいなかに将来性のある仕事として認知させ、学歴のいらない仕事に大卒者まで志望者が増えたのもナベプロが下地をつくったと言える。それでも晋氏のマネジャー教育は一貫したものだったという。
「マネジャーはタレントを育て、タレントはマネジャーを育てる」という指針のもとマンツーマンで組ませ、失敗も成功も共有させた。こうした教育が芸能界の総合商社になるまでの需要なファクターとなった。 (つづく)