「小さんのお供してたんで女関係まで全部知ってるからな」

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「朝太に負けるなと言われたけど、ヤツは2年で二つ目になり、5年で真打ち昇進よ。大負けだよ」

 1960年3月、二つ目になった小光は柳家かゑると改名した。カエルが柳に飛びつく小野道風の絵から取った。

「内弟子修業を終えて小さん宅を出た後も師匠には可愛がられたなあ。なにせ、しょっちゅう小さんのお供をしてたんで、女関係まで全部知ってるからな」

 それは師匠の信頼を得るはずだ。小さんだけでなく林家三平(先代)にも可愛がられたという。

「三平さんのこっち(小指を立てた)関係も知ってたからね。というのは、三平さんとこの弟子はおかみさんの香葉子夫人に懐柔されてて、こん平なんか、すぐおかみさんにしゃべっちまう。そんな弟子はお供に連れてけないから、口の堅い俺を連れてくわけさ。夜遊びした帰り、根岸の三平宅まで送り届けるのも役目だ。すると、ヤキモチ焼きの香葉子が生卵持って待ち構えてる。亭主にぶっつけようってんだから怖いね。俺が一緒だと弾よけになって防げるわけよ。塀にぶつけた卵が割れるのを見た三平さん、『かゑる君。君(黄身)が悪い』って(笑い)。そういうときでも笑わせるんだからな」 (つづく)

(聞き手・吉川潮)

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