大林監督の目「安心感を感じたとき、女の子は一番美しい」
10日、映画作家の大林宣彦さんが肺がんにより82歳の生涯を閉じた。
40~50代の映画好きにとって「大林宣彦」の名前は特別なものだ。「転校生」(82年)、「時をかける少女」(83年)、「さびしんぼう」(85年)の尾道3部作は当時の若者の感性を揺るがし、72年生まれの私にとっても映画の魅力にはまるきっかけを与えてくれた。フィルムに刻まれた人間味あふれる物語と圧倒的センチメンタリズムは、堅苦しい映画賞などの枠に収まらない、大衆に愛される映画を量産した大林映画の真骨頂といえた。
彼の映画には、いつもかわいらしいヒロインが登場する。それについて「花筐/HANAGATAMI」(17年)の完成後に闘病中ながらインタビューに応じてくれた監督は、「じつはオーディションが苦手で、いつも最初の子に決めてしまう」と教えてくれた。人間を愛するが故、比べて優劣をつけるのが性に合わなかったのだろうと思う。
「どうしてあんなヘンテコな子を選んだのとよく言われるけど、どんな子だって父親から見れば世界一かわいいでしょう。同じように愛情をもって見続ければ、欠点だって個性に思える。それが女優に伝わるとね、みな奇麗になるの。安心感を感じたとき、女の子は一番美しくなるんだよ」
大林監督ほど女優の魅力を引き出し、観客へ伝えた監督はいないだろう。石田ひかり、宮崎あおい、小林聡美ら無数の女優たちの、少女時代のかけがえのない瞬間をヌードも含めて切り取ってきた。“恩師”と語る常盤貴子をはじめ、その温かい人柄を慕う女優も多い。