タモリ“ハナモゲラ男”はシモキタ・ロフトで東京デビュー
平野「いいですよ。(お客から)飲み代くらいは請求してもいいですか」
山下「お金の取れる芸人じゃないので残念ながら会場料も払えない。赤塚不二夫さん、浅川マキさん、中村誠一さん、坂田明さん、筒井康隆さんといった<全日本冷やし中華愛好会>の連中もやって来ます。もちろん飲み代は取ってください」
山下トリオが1972年の福岡公演終了後、宿泊先のホテルの部屋で打ち上げをやっていると九州の変な男=タモリさんが乱入。一緒になって踊り狂ったという。ドンチャン騒ぎが終わり、窓の外が白み始めたころに「ところであなたは何者ですか?」と聞いた。男は真顔に戻って「森田(一義)と申します」と答えたという。
山下さんが行きつけのバーの常連客の間で「タモリを見たい」という機運が高まり、噂を聞き付けた漫画家の故・赤塚不二夫さんもタモリさんをいたく気に入り、上京させてシモキタ・ロフトに立たせることになった。
何とも不思議なステージは、午後11時30分にスタートした。この日たまたま飲みに来た人は、タモリさんのデタラメ言語<ハナモゲラ語>など抱腹絶倒の芸を見られてラッキーとしか言いようがない。国民的スターとなったタモリさんのデビューがシモキタ・ロフトだったことは、とても名誉なことだと思っている。