YOASOBIは紅白出場濃厚「夜に駆ける」は死への渇望を昇華
まるで、太宰治の「人間失格」のような儚さと美しさの先のゾッとする不気味さも包括している世界観。「死」というものをテーマに描いた作品は、どうしてもそのテーマの重さに引っ張られるようにシリアスで重々しいサウンドになりがちだ。
しかし「夜に駆ける」は、そうではない。サウンドだけでいえば、「生」を感じさせるキャッチーな明るさがあり、これがまさか「死への渇望」を歌った歌だと気づくのは至難の技だろう。いい意味で、詞の世界観と曲の雰囲気がマッチしていないのだ。
さらには、ボーカリストであるikuraさんの透明感かつニュートラルな声の力で、そのテーマ自体の重々しさを一掃し、むしろ「生への希望」すら感じられるような独特の世界観が成立している。
「これはフィクションという名の芸術なのだ」という「あえて感」が、しっかりと計算された上で製作されていることが窺える。
■フィクションとしての「死への渇望」は表現するべきか?
この曲が流行った時、SNSなどでは、子供が心中の歌を口ずさむことに多少なりとも不安を覚える親の呟きが見られた。