時代と社会の歪みの中で不幸にも交差してしまった2人…
なんとも痛ましい事件である。
ホームレスの老人女性が、渋谷区のバス停で殴り殺された。犯人は付近に住む46歳の男性。「殺すつもりはなかった」と自首してきた。あっという間に殺人事件は解決した。
ともすればそのまま記憶の底に沈んでしまうような、小さな事件。しかし詳細を知れば、これほど今の日本を象徴する事件もない。
被害者は64歳、3年前にはちゃんと就職していた。今年の2月までは、非正規ながらスーパーで働いていた。しかしそこもクビになった。おそらくはコロナのせいであろう。
今の時代、ネットカフェも追われれば、路上生活者になるのはあっという間、スピードは速い。私と同い年であれば、青春時代にバブルも経験したであろう。華やいだ時期もあったかもしれない。しかし、亡くなった時の所持金はたった8円であった。
発表では、所持品は「衣類や食品のゴミ」とある。違うだろう。ゴミに見えても彼女には衣類であり、食事であったはずだ。