公人は理想を掲げ、子供に希望を与え、実務を現実的に行え
混迷を極めた米大統領選挙も、ついにバイデン氏の当選確実が出て大勢は決した。多くのアメリカ国民はほっと胸をなで下ろした。と書きたいところだが、「多くの」というのはある意味正しく、ある意味正しくない。
史上最高の投票率を記録した今回の選挙では、バイデン氏は過去最高の票数を得た。しかし僅差で負けたトランプ氏も、実は史上最高の得票を確保していたからだ。
トランプ氏が今すべきことはすぐに敗北宣言し支持者に向かい「もう争いはやめよう。全ての国民はアメリカのために一つになろう」と団結を呼びかけることである。
しかし傲岸不遜で自己中心で、自らの利益のためにはなりふり構わぬ赤ネクタイの男は真逆の行動に出た。何の証拠も示さないまま郵便投票の不正を訴え次々に訴訟を繰り出したのだ。トランプ支持者はそれに呼応し、国は赤と青に分断された。
■トランプを崇拝した利己主義の危うさ
たしかにトランプ氏は雇用を増やした。労働者たちをある程度救ったかも知れない。しかしすべての貧しき者を救ったわけではない。有色人種や移民には厳しかった。彼は常に自分が生き残るためだけに行動してきた。彼にとって必要なのは選挙に勝つための過半数の国民だ。自分を支持しないからと、ツイッターで「ニューヨークは地獄に落ちろ」と叫んだ。こんな大統領がかつていただろうか。米メディアは「ここはアメリカでベラルーシではない」と言った。バイデン当確が決まった時、黒人コメンテーターは「やっと親が子に、いい人であれ、と胸を張って言える時がやってきた」と涙を流した。