時代と社会の歪みの中で不幸にも交差してしまった2人…
バス停にはいつも終バスが出た後の深夜に来た。そこから始発の前の時間まで、彼女は短い睡眠を取っていた。ホームレス対策で真ん中に手すりがあり、横にはなれない。近所の人が何人もキャリーバッグを杖のようにして眠る姿を目撃している。
所持品には、充電の切れた携帯電話もあった。親戚の連絡先のメモも。きっと彼女は自分がホームレスだとは思っていなかったのではないか。いつか携帯を充電し、身内に連絡するつもりだったのだろう。
加害者はこの女性を、コンビニ袋に石を詰め、頭に振り下ろし殺している。殺意はなく、その場所から移動させたかっただけだと供述している。近所の酒屋を母と2人でやっていて、父はいない。父のいた頃は引きこもりだったという息子はかろうじて外には出たが、仕事はせいぜい酒の配達ぐらいだった。
過去に近隣の住人と揉めている。その住人が引っ越してきて屋根にアンテナを付けた。彼は「僕の世界はベランダから見える景色だけだ。その景色を変えないで欲しい」と押しかけてきたという。46歳にもなって世界はベランダから見える景色だけ。それを変えるものは皆排除する。世の中をゲームの画面のようにしか捉えていない未成熟さ。自首する時も母親が付き添っていることからもそのことがわかる。