元バイトAKB梅澤愛優香さん “ラーメン女王”に華麗なる転身
梅澤愛優香さん(24歳)
AKB48の姉妹グループの中でも異色の存在だった「バイトAKB」。アルバイト求人サイトとのコラボ企画で2014年9月から15年2月までの期間限定、時給1000円が話題となった。梅澤愛優香さんは250倍もの激戦を経て第1期メンバーに選出され、AKB劇場公演にも出演。卒業後のセカンドキャリアとは?
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新緑がまぶしい神奈川県鎌倉市。JR北鎌倉駅から南へ徒歩15分、鎌倉五山のひとつ、古刹・建長寺の門前にあるつけ麺専門店「中華蕎麦 沙羅善」が梅澤愛優香さんの“城”。梅澤さんはラーメン店の店主になっていた。
「ここは昨年4月に仮オープンし、麺やスープを試行錯誤しながらブラッシュアップさせ、8月にグランドオープンしました。特徴は、麺とつけ汁、丼、内装、外観にもとことんこだわり、私なりのラーメン哲学を反映させていることです」
開店までに300店以上を食べ歩き
つけ麺専門店にしたのは、千葉県松戸市の超有名行列店「中華蕎麦 とみ田」の影響だ。
「まず、麺だけのうま味を味わい、そしてつけ汁をつけ、最後はスープで割って楽しめる。1食で3度おいしいのがつけ麺です。初めて食べて衝撃を受け、店主の富田さんからさまざまなアドバイスを受けながら、さらに私なりにひと手間ふた手間、工夫しています」
まずは麺。小麦は農林61号と小麦の原種ともいわれるスぺルト小麦をブレンドした自家製麺。ほぼ正方形で太さは約6ミリ、茹で揚げに17分から18分かかるが、口に運べば小麦の香りがスッと広がり、優しいうま味で満たされる。つけ汁とは別に、塩、またはスダチで味わうのも一興だ。
一方、丼は有田焼の窯元にオーダーしたオリジナルで、内装・外観ともに古都・鎌倉を意識した純和風づくり。カウンター前と通路脇の額装は勝海舟の真筆という。
「つけ汁は豚骨ベースの魚介風味ですが、当店の命。絶対的企業秘密なので、他の店のタレも含め、私しかレシピを知らないんです(笑い)」
他の店、というのは、梅澤さんはラーメン専門店「麺匠 八雲」を神奈川県大和市と都内葛飾区堀切に2店構えているからだ。
1号店は自宅がある大和市で、梅澤さんが20歳だった17年9月23日にオープン。開店するまでに食べ歩きした専門店は300店超。各店舗の特徴を記した“研究ノート”は4冊になっていた。
「当初、私が大好きな味噌ラーメンをイメージして『札幌ラーメン 八雲』の名称でした。でも醤油味も塩味もありますから、間口を広げるため『麺匠』に改称したのです」
その後、18年10月に堀切店を開業し、本店を移動。片道1時間40分前後かけて両店を往復しながら切り盛りした。
「実際に作っていない」と誹謗中傷も…
だが両店とも、グルメサイトで高評価を得る一方、「名前貸しで実際に作っていない」「スポンサーがいる」と、心外な誹謗中傷を流す自称ラーメン通や評論家もいた。
「朝4時から仕込みをして、寝るのは日付が変わってから。毎日そうやってラーメン作りに心血を注いでいたのに、あんまりじゃないですか。それで私が携わっていることは一切伏せ、『黒字で閉店』を目標に、庶民的な専門店『とらや』を横浜市内に19年1月から1年間・期間限定で営業しました。おかげさまで目標を達成。ラーメンにかける熱意を少しはわかってもらえたと思います」
もうひとつ、フランチャイズタイプの「煌龍軒」を都内と横浜市内に2店舗手がけたこともあったが、さすがにひとりで運営するには体力的に限界。そちらを手放し、自宅から30分ほどで通える北鎌倉に「沙羅善」を立ち上げた。
「アイドルとラーメン店経営の共通点は、自分ひとりではできないことを従業員やお取引先の協力で達成し、お客さまを笑顔にすること。『また来るね』が一番の励みです」
4月8日には梅澤さんが歩んできたアイドル時代とラーメンとの日々をまとめた単行本「ラーメン女王への道」(さくら舎)が発売されたばかりだ。
(取材・文=高鍬真之)
*なお、同店は6席限定・1時間の入れ替え制でランチタイムのみ営業、要予約。「濃厚豚骨魚介つけめん」(1200円~)、「特選チャーシュー5種盛」(1100円)。