クック井上。さん ニンニクのパンチが効いた自家製オニオンソースのステーキ

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クック井上。さん(芸人・46歳)

 芸人でありながら、料理上手芸人として「ZIP!」や「あさイチ」に出演してMCをうならせる腕前のクック井上。さん。料理の師匠である母親の思い出レシピは、自家製オニオンソースのステーキ。クックさん自身が商品化までしたという逸品だ。

 5歳くらいの時、オカンがよくステーキハウスに連れていってくれて、ステーキソースについて「もうちょっと甘さがなかったらええのにな~」とよく言っていたんですよ。

 ある日、「これなら家でも作れそうやな~」と言って、その店のステーキソースの味を再現した上で、甘さを抜いたソースを作ったんです。それが実においしかった!

 まずタマネギのスリおろしを油で炒め、そこに同じくスリおろしたニンニクを混ぜて炒め、塩コショー、しょうゆ、レモン果汁を足していく。その店のソースから甘味を抜いたかわりに酸味が強めの味となってました。ニンニクはパンチが効いてましたね。

 普通、ステーキソースって焼き肉のタレのようにどろっとしている液体じゃないですか。でも、オカンのはタマネギがメチャクチャ多くて、ソースというより、ステーキの上に大根おろしみたいにスリおろしたオニオンがボトッてのってる感じ。それを切ったお肉にのせて食べるんです。

■「これからの男は料理できなアカンでぇ」

 僕は子供の頃から肉が大好きだったから、オカンの自家製オニオンソースで食べるステーキは最高のごちそう。8歳下の妹が生まれる前から作っていたので、僕とアニキの男の子2人がもりもり食べるだろうと、そのソースを発案したと思います。

 僕はその頃から料理を手伝い始めました。オカンが「これからの男は料理できなアカンでぇ」と言ってましたから。タマネギのスリおろしが下手で塊が入っていても、たとえばギョーザなら皮に包むのが下手で不格好なものになっても、オカンは「うまいねえ」と褒めてくれました。だから最初の成功体験は料理を手伝うことなんです。

 スポーツや勉強と違って、一部分を手伝っただけで成功体験を得られた料理が、僕には大きかった。芸人とは別におもにアイデア料理の仕事をしているのは、オカンの影響です。

東京に戻るとオカンが電話でダメ出し

 神戸生まれだけど広島暮らした時期もあり、5年前に広島のレモンの調味料会社から、「球場での音楽フェスで、レモンを使った料理でコラボしませんか」と誘われたんです。僕はその時、オカンのレモン果汁入りのソースを思い出して!

 オニオンソースを再現し、牛串にかけてフェスで出したら「メチャおいしい!」と喜ばれ、「商品化しませんか」と。その後、レモニオンソース(瀬戸内レモン農園(R))という名で商品化しました。オカンのソースとは違って女性も食べられるようにニンニクは抜いたのですが、考案できたのはオカンのおかげ。オカンに商売させてもらってます(笑い)。

 先月は「あさイチ」に出演させていただけて。有名な料理人さんや料理研究家の方たちが出るコーナーに、かつて芸人で出たのは僕だけ。見てくれた方の反響は大きかった。試食の時間は2分もないのに、華丸・大吉さんは生放送が終わってから「うまいうまい」と食べて、完食してくれました。僕はお笑いより料理の方がウケちゃってます(笑い)。

 以前は実家に帰るとオカンの料理を食べさせてもらってましたけど、最近は「クックに作ってもらわなアカンわ」とオカンがイジってくる。「おいしいおいしい!」と食べてくれるけど、僕が東京に戻った時に電話でダメ出しをしてくる。「もうちょっと塩加減抑えた方が女子は喜ぶで」とか。

 僕の師匠ですよね。いつかオカンに認めてもらう日がゴールと思ってます。

 最近は自家製オニオンソースも作りましたが、「お母さんの味覚が変わったんか、もうちょっとニンニクが薄い、商品化したソースの方がええわ」と言ってました(笑い)。

 (聞き手=松野大介)

▽本名=井上義博 1974年9月、兵庫県神戸市出身。お笑いコンビ・ツインクルと並行し、最強料理芸人として活動。フードコーディネーターや食育インストラクターなど資格多数。 雑誌「Oceans」「Fielder」、ウェブ版「FORZASTYLE」、「ぐるなび」などでグルメコラム連載

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