山口洋子にも「実家の姑さんに可愛がられる嫁にならないといけない」という呪縛が
権藤の実家は佐賀県鳥栖市である。「おしん」で描かれた世界観は、いささか過剰な演出にすぎたとしても、その価値観の一片だけは残っていたのかもしれない。何せ昭和30年代の話である。
入学してすぐ高校を中退して、16歳でカフェを経営、18歳で東映の女優、20歳で安藤昇の愛人になって逃避行の片棒を担ぎ、21歳で銀座のマダムになったという、この時点で波乱の半生を送ってきた山口洋子ですら「実家の姑さんに可愛がられる嫁にならないといけない」と強く願っていたのだから、いかに当時の価値観が強固なものだったか、改めて痛感するほかない。 (つづく)