「警察呼ぶよ!」清純派女優に罵倒されるも消えないスクープへの執念
ベテランコンビの記者とカメラマンがいつものバンで張り込んでいると、アイドル女優がつかつかと歩み寄ってきて、そのままスライドドアをガラッと開けた。
「ちょっとアンタたち、なに勝手に撮ってんのよ! 分かってんだからね! 警察呼ぶよ」
清純派のイメージのある美少女が大きな瞳を吊り上げ、罵倒してくる。張り込みはしていたが、狙っていたのは彼女ではない。そう説明するか迷ったが、聞く耳を持たないだろうし、人目を集めてしまっている状況をまず何とかしなければならない。
「すみません」
なんで謝罪しているのか分からないまま、軽く頭を下げてドアを閉め、車を出した。バックミラーに、腕を組み、まだこちらをにらみつけてくる女優が映る。
「なんで、あんな若い娘に罵られなければならないんですかね」
40代後半の記者が愚痴ると、還暦過ぎのカメラマンもうなずいた。
「全く。俺からみれば、孫の世代だぜ」