<28>「写真はNGです」早貴被告は構えるカメラに舌打ちした
私が大袈裟に驚くと早貴被告は誇らしげに笑った。無論、お世辞である。
ピンヒールの靴やシャネルのバッグ、そして高価そうな黒のロングコートは21歳の娘には背伸びをしているようで、いい印象を持てなかった。中国や中東でモデルの仕事をしているのも多分ウソなのだろうと思ったが、深くは聞かず黙っていた。
私はドン・ファンと早貴被告がテーブルに腰かけて乾杯をする様子にカメラを向けた。
「写真はNGなんです。困りますから撮らないで下さい」
チッという舌を鳴らす音と共に、早貴被告は鋭い視線を向けてきた。
「キミの顔を載せることはないから」
「嫌です」
ドン・ファンは口を挟むことなく我々と早貴被告の様子を見ているだけだった。そのまま続ければ険悪な雰囲気になりそうなので、私たちは撮影を諦めて、取材を終了した。
「あんな小娘からNGなんて業界用語が出てくるだけで、ムカムカしてきますよね。どうせ顔をさらすことはないのに」