著者のコラム一覧
増位山太志郎元大相撲力士

1948年11月、東京生まれ。日大一中から一高。初土俵は67年1月場所、最高位は大関。引退は81年3月場所。引退後は日本相撲協会で審判部副部長を務めた。74年「そんな夕子にほれました」、77年「そんな女のひとりごと」などがヒット。画家として二科展入選の常連。「ちゃんこ増位山」(墨田区千歳)を経営。

<16>最初はリンゴやミカンを描いていたけど力士を書くようになった

公開日: 更新日:

 絵を描くようになって銀座で個展をやっていた時のことです。

 エステで働いているという30代の女性が2、3人やって来て、「私たちが小学生の頃は絵、図工とか体育、音楽が好きな人のことを『増位山流』と言ってましたよ。『増位山流』という言葉もはやりました。私たち増位山流の年代です」と言われたんです。

 算数、国語、理科、社会はダメだけど、図画工作、音楽、体育の3つが得意ということ。そういえば、新聞や雑誌でそんなことを言われて話題になったなと思い出しましたよ。

 前も話したように、絵を描くようになったのは先代増位山の親父の影響です。親父は絵を描くのが上手で、力士になる前、大阪・北新地の米屋で丁稚奉公をやっていた頃はアルバイトで映画館の看板なんかを描いていたそうです。それで力士を引退して、相撲協会の仕事も暇になってから絵を描くようになった。

 だれか先生に教えてもらった方がいいというので、二科展の中山三郎先生を紹介してもらって、二科の公募展に出品して毎年のように入選していました。

 そのうち名古屋で個展をやることになって、花を添えるために僕ら関取衆になんでもいいから描いて出してくれと言われて描いたのが最初です。ここ(ちゃんこ増位山)で親父が描いているのを横で見ながらデッサンして最初は見よう見まね。何が何だかわからないままリンゴとかミカンとか描いていたのかな。

 同じ部屋の北の湖さんも一緒に始めて富士山の絵を描いて、後々、個展をやったりしていました。

 そんな絵でも面白いもので、後援会の人はひいきの力士の絵だからとそれなりの値段なのに買ってくれる。北の湖さんの最初の絵なんて貴重だからずっと持っているんじゃないかな。

親父から二科に出してみろよと言われ

 絵の具は混ぜると色が変わるでしょ。それが面白かった。やっているうちにのめり込みました。親父からは、おまえも二科に出してみろよと言われ、中山先生にも親方が描いているのと同じ絵の具で一緒に描けばいいじゃないかと言われてその気になりました。

 最初に描いていたのは花とか景色だけど、そういう題材は専門の絵描きさんにはやっぱりかなわない。親父の最初の入選作は太鼓腹の力士が塩をまいている「清め」という絵でした。なので、僕も相撲を題材にするようになりました。力士は花を描くより、力士、相撲を描く方が意味があるということだと思います。

■感覚的にこの絵はいいと思えればそれでいい

 よく、絵を見てわからないと言う人がいます。でも、それはおかしいんじゃないかな。感覚的に、この絵はいいと思えば、それでいいんです。よく、知ったかぶりをする人がいるじゃないですか。ちょっと絵をかじったとか、絵に詳しいとか言って。知識をひけらかし、技巧的なことを言って評価したりする人です。

 でも、芸術はそういうものじゃないと思う。要は絵を見て、欲しいな、買いたいなとか、この焼き物はいいなという意欲が湧けばよくて、そう思えるのは立派な作品だということです。講釈を言いたい人は、勝手に言っていればいいんです。芸術はそれくらい自由なものですよ。だいたい買う気がないから、無責任なことを言えるんです。=つづく

(聞き手=峯田淳/日刊ゲンダイ) 

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  2. 2

    中居正広の女性トラブルで元女優・若林志穂さん怒り再燃!大物ミュージシャン「N」に向けられる《私は一歩も引きません》宣言

  3. 3

    中居正広はテレビ界でも浮いていた?「松本人志×霜月るな」のような“応援団”不在の深刻度

  4. 4

    中居正広「女性トラブル」フジは編成幹部の“上納”即否定の初動ミス…新告発、株主激怒の絶体絶命

  5. 5

    中居正広の騒動拡大で木村拓哉ファンから聞こえるホンネ…「キムタクと他の4人、大きな差が付いたねぇ」などの声相次ぐ

  1. 6

    木村拓哉は《SMAPで一番まとも》中居正広の大炎上と年末年始特番での好印象で評価逆転

  2. 7

    中居正広9000万円女性トラブル“上納疑惑”否定できず…視聴者を置き去りにするフジテレビの大罪

  3. 8

    中居正広「女性トラブル」に爆笑問題・太田光が“火に油”…フジは幹部のアテンド否定も被害女性は怒り心頭

  4. 9

    中居正広が払った“法外示談金”9000万円の内訳は?…民放聞き取り調査で降板、打ち切りが濃厚に

  5. 10

    中居謝罪も“アテンド疑惑”フジテレビに苦情殺到…「会見すべき」視聴者の声に同社の回答は?

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人が戦々恐々…有能スコアラーがひっそり中日に移籍していた!頭脳&膨大なデータが丸ごと流出

  2. 2

    【箱根駅伝】なぜ青学大は連覇を果たし、本命の国学院は負けたのか…水面下で起きていた大誤算

  3. 3

    フジテレビの内部告発者? Xに突如現れ姿を消した「バットマンビギンズ」の生々しい投稿の中身

  4. 4

    フジテレビで常態化していた女子アナ“上納”接待…プロデューサーによるホステス扱いは日常茶飯事

  5. 5

    中居正広はテレビ界でも浮いていた?「松本人志×霜月るな」のような“応援団”不在の深刻度

  1. 6

    中居正広「女性トラブル」フジは編成幹部の“上納”即否定の初動ミス…新告発、株主激怒の絶体絶命

  2. 7

    佐々木朗希にメジャーを確約しない最終候補3球団の「魂胆」…フルに起用する必要はどこにもない

  3. 8

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  4. 9

    フジテレビ「社内特別調査チーム」設置を緊急会見で説明か…“座長”は港社長という衝撃情報も

  5. 10

    中居正広「女性トラブル」に爆笑問題・太田光が“火に油”…フジは幹部のアテンド否定も被害女性は怒り心頭