梶原しげるさん 一念発起で起業したオンライン「話し方教室」を成功させたい

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梶原しげるさん(フリーアナウンサー/71歳)

 文化放送のアナウンサーからフリーになり、ラジオ、テレビなどで活躍する梶原しげるさんが夫人の難病との闘いと自身を振り返る著書「妻がどんどん好きになる」を上梓した。梶原さんは新たなビジネスにも挑戦中。これからやりたいことは……。

  ◇  ◇  ◇

 僕がまだアナウンサーだった30年前、40歳前後ですが、そろそろ会社を辞めて独立して起業したいと思い立って、会社をつくりました。シーゲルコミュニケイションズという会社ですが、結果的には形ばかりでフリーになってからの振込口座の会社のようなものでした。

 でも、ズルズルと請負仕事をやっているうちに60歳を過ぎ、70歳になって、起業したいという志があったのに、やれていないじゃないかと。そこで今年3月に会社を使って起業することにしました。それがオンラインでやる話し方教室の「ツタバナ」(伝わる話)です。たまたま設立30周年になる会社の定款を取り寄せてみたんです。すると、そのトップに話し方教室と書いてあった。そうか、教室は当時から僕がやりたかったことなんだなと改めて気がつきました。こういうコロナの状況もあるし、やるならオンラインで。これは死ぬまでにきちんとやっておかないといけないと思い直しました(笑い)。それで人を頼り、スタッフとも出会って、30年ぶりに会社的に動き始めたわけです。

■お金のやりくりが大変

 しんどいのはやはりお金のことですね。いろんなことをお願いするとなると、先立つものはお金です。宣伝するにしてもHPをつくるにしてもお金がかかる。ステキなHPができたけど320万円かかりました。それから毎月の宣伝費に40万円、メンテナンスに5万円……。当初は入金が全くなくて出ていくばかり。これまでしゃべって稼いだ残りがあったので、それを回していたけど、通帳の残高がゼロになった時もあります。支払いに漏れがないか気になって毎日のように通帳を記帳したりもしました(笑い)。

30代、40代の悩めるサラリーマンをマンツーマンで

 講師は地方局のアナウンサーやキー局の元アナウンサーなど約20人。Zoomを使ってマンツーマンでやります。Zoomは会場費がかからず、講師は会場に待機する必要がないのがメリットですね。

 レッスンはスケジュールが合う人にやってもらいます。常時20人キープしようと思うとお金もかかるし、僕が夢見ていたことと現実は違うことも多く、収支は全然、合わないですね(笑い)。

 受講する人は30代から40代のサラリーマンの方が多いですね。これまでは若手として先輩の言うことを聞いていればよかったけど、自分が後輩を教え育てる立場になった時に、彼らを説得してどうやったらやる気にさせることができるか、どう叱ったらいいのか、慰めたらいいのか、どういう言い方をしたら反発されないのか、どう話したらついてきてくれるか……。どういう順番でスピーチするかとか、プレゼンのスキルがないといったことで悩んでいる人もいます。

 こういう時代なのに、企業では社員を集めて訓示するようなアナログなこともやっていて、それが一番苦手、過緊張、しゃべると思うとドキドキすると悩んでいる人が結構、多いんです。

 サラリーマンはテクノロジーでは困っていないけど、アナログで困っている。他人と話をすることが少なく、先輩と一杯飲みに行くこともない。社内で学ばなくても済むし、無駄話もなくなっている。普段から相手にどう話を切り出し、話をつなげたらいいのかわからなくなっているんです。「相手を見て褒めてみる」なんていうと、今は「そんなインチキはできません」というマジメな話になっちゃう(笑い)。

 オンライン教室はレッスンの7回分をワンチケットとして購入してもらい、相談内容を聞いてマッチングします。毎回20人の方が受講して、20人の講師がレッスンをやるような状況になればいいけど、「今日は受講者がいない」なんて日もあります(笑い)。

 70歳を過ぎて、今月は大丈夫かなんてヒヤヒヤしているのは、会社員生活が19年間と短かく、年金が少ないこともあります。雑誌なんかを見ると、1カ月の年金が20万円、30万円ももらえる話が出ています。僕にとってはそうなんだという感じ。黙っていても30万円くらいの年金があって年間で三百何十万円が入る、それなら楽でいいなあなんて思います。でも、夢ばかり見て、お金のことをきちっと考えてきませんでしたからね。

 1年くらい経って落ち着いて、うまく回るようになったらいいんですけどね。教室が成功して、もし僕がいなくても代わりに事業を引き継いでくれるような人がいて、80歳くらいになって思い返すことができたらいいなと思います。

 妻は26年前にアーノルド・キアリという小脳の奇形の難病になり、今も病と闘っています。私は仕事人間で家庭を顧みなかった時代もありましたが、今は妻と楽しい日々を送っています。オノロケに聞こえるかもしれませんが、そんな思いをつづったのが「妻がどんどん好きになる」という本です。起業のストレスはものすごく大きいけど、妻のことを書いている時は安らぎで、救われました。

(聞き手=峯田淳/日刊ゲンダイ)

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