<125>早貴被告との面会を弁護士は頑なに拒否「回答は差し控えさせていただきます」
弁護士は焦ったような言い方をした。
「ご回答は差し控えさせていただきます」
私は相手の常套句で返事をした。30分以上も続いた会話は結局、噛み合うことがなく終わった。
■慌てて社印を借り受け委託契約
「なんかあったかい?」
マコやんから電話があったのは、この電話が終わって1時間ほど経ってからだった。
「どうしたんですか?」
「あのな、U弁護士から切羽詰まったような電話が何本もかかってきて、『明日の朝に田辺に行くから社印を貸して欲しい』って頼まれたんや。『社印の保管はワシやなくて佐山さんやで』って言ったけど佐山さんと連絡が取れないとかでワシに頼んできた」
私はマコやんに弁護士との電話のやりとりを詳しく話した。
「そうか。ヨッシーのアドバイスで気が付いたということか。やっぱりあいつらアホやなあ」
翌朝、弁護士はアプリコに姿を現した。そこで社印を金庫番の佐山さんから借り受けてアプリコとの業務委託契約を結んだことまで私は知っているし、証拠も残っている。