コロナ禍で奮闘する「下高井戸シネマ」が多くの観客から支持されるワケ
なぜ観客の色分け、厚い層ができているのか。2つほど考える。番組編成と立地、形態である。前者はそのチョイスがマニアックにならず、ジャンルが多様だ。映画の選択センスが良く、しかも非常にバランスがいい。観客に開かれていて、一つの型にはまらない。今は昨年話題になった作品が中心だから、観客の関心も高くなるだろうが、編成の妙は一時期だけに限らない。
後者は私鉄沿線の下高井戸駅のすぐそばという場所に親しみがあり、周辺地域に限られるが、実に行きやすい。大げさな外観、雰囲気のないコンパクト映画館だ。マンションの階段を上がっていくときのワクワク感といったらない。大きなターミナル駅周辺だとこうはいかない。そんな立地から生まれる地元密着型という特質(会員制度の充実など)も強みだ。
手元に同館の「10周年メモリアル」という小冊子がある。2008年に発行されたもので、1998年から10年にわたって上映された全作品を網羅している。映画のタイトルが並んでいるだけなのに(イラストがまたいい)、映画の熱い息吹が誌面から浮かび上がってくるかのようだ。
二番館、三番館という地味な位置づけの映画館ではあるが、ひっそりと、しかし力強く映画の歴史を刻みつつ、コロナ禍の今に奮闘している。一度、足を運んでみたらどうだろうか。