(3)グループの方向性めぐり長男とはたびたび衝突…殴り合いになることも
グループで音楽活動を続けていると、グループ内でギャラや方向性を巡る問題で揉める話をよく聞くが、ウチはお金の管理はすべて父親だったから揉めようがなかった。しかし方向性については揉めるようになった。
リーダー格の長男に対して、僕たちも次第に意見を言うようになりたびたび衝突した。小さい頃のきょうだい喧嘩のように声を荒らげ、殴り合いになることもあった。長男に「歌い方が悪い」とよく注意されたが、僕が素直に聞き入れるはずもなく反抗する。時には台所から包丁を持ってきて「殺すぞ」と言われたこともあった。父親は沖縄空手もやっていたが、きょうだいは誰一人習っていない。理由を聞くと「オマエたちに教えたら喧嘩にしか使わない」と言っていたのも納得だった。
現在、長男は体調を崩して沖縄で静かに暮らしているけど、帰れば長男とは戦友のような感覚で昔話をよくする。グループとしての悩みよりも当時の僕にはもっと深刻な悩みがあった。中学2年の頃に迎えた変声期。誰にもあることだけど、小学生から歌手として喉を酷使してきたツケがひどかった。声がどんどん出なくなり、かすれ声を出すのもつらい日もあった。ハイトーンボイスが出ない……。妹の妙子にボーカルをやらせたり、バンド演奏を前面に押し出す形などを試みたが反応もファンのノリも悪い。窮地に立たされた。 =つづく