著者のコラム一覧
秋本鉄次映画評論家

映画評論家。山口県生まれ。広告代理店や出版社を経て現職。“飲む・打つ・観る”“映画は女優で見る”をモットーに、「大人の男のエンタメ」としての娯楽映画や女優の魅力を語る映画評論を展開。

「ぜんぶ、ボクのせい」松本まりかの姿態もイイが…寄る辺なき少年の試練と諦観を見よ

公開日: 更新日:

「大人は判ってくれない」を想起

 おっと、まりか嬢に目を奪われ過ぎるのは禁物。本作の主眼は、そんなモンダイ母に見捨てられ、せっかくのホームレス中年と少女との“生活”も暗転を迎える寄る辺なき少年の悲痛な試練だから。

 この映画に、当時27歳のフランソワ・トリュフォー監督の代表作「大人は判ってくれない」(1959年)を想起する人も少なくない。私の場合は加えて、この主人公の傷つき方に、こちらも名作「バルタザールどこへ行く」(64年)を思い出した。

 人間たちのエゴに翻弄される物言わぬロバのバルタザールと違って、この少年は当然のように声を発する。「ぜんぶ、ボクのせい」、と。何かと“他人のせい”にする輩が多い中、彼は毅然とそう答える。この底知れぬ諦観、諦念を13歳の彼に言わせることが凄い。

 そんな絶望の中にも一条の光を与えるのが、エンディングで流れる大滝詠一の「夢で逢えたら」だ。この名曲ひとつで見た後の印象も大きく変わる仕掛けにもなっている。

 個人的には、少年少女を主人公にした作品は紋切り型が多く、苦手なのだが、本作は明らかに一線を画する。誰にも多少はあるだろう、遠き日の少年時代の“暗い記憶”に寄り添う映画だからだ。

(新宿武蔵野館ほかで全国順次公開中) 

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    ビートたけし「俺なんか悪いことばっかりしたけど…」 松本人志&中居正広に語っていた自身の“引き際”

  2. 2

    《もう一度警察に行くしかないのか》若林志穂さん怒り収まらず長渕剛に宣戦布告も識者は“時間の壁”を指摘

  3. 3

    フジテレビに「女優を預けられない」大手プロが出演拒否…中居正広の女性トラブルで“蜜月関係”終わりの動き

  4. 4

    元フジテレビ長谷川豊アナが“おすぎ上納”告白で実名…佐々木恭子アナは災難か自業自得か

  5. 5

    萩原健一(6)美人で細身、しかもボイン…いしだあゆみにはショーケンが好む必須条件が揃っていた

  1. 6

    "家族総出"で話題の長渕剛「桜島ライブ」延期と引退報道…ファンからは《あの問題説明して》と懇願

  2. 7

    橋本環奈『おむすび』はNHK朝ドラ視聴率ワーストほぼ確定…“パワハラ疑惑報道”が致命傷に

  3. 8

    別居から4年…宮沢りえが離婚発表「新たな気持ちで前進」

  4. 9

    中居正広氏は37年で築いた資産喪失の瀬戸際…不動産複数所有で倹約家も「違約金+α」の脅威

  5. 10

    フジテレビ騒動で蒸し返される…“早期退職アナ”佐藤里佳さん苦言《役員の好みで採用》が話題

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    野村監督に「不平不満を持っているようにしか見えない」と問い詰められて…

  2. 2

    「高額療養費」負担引き上げ、患者の“治療諦め”で医療費2270億円削減…厚労省のトンデモ試算にSNS大炎上

  3. 3

    萩原健一(6)美人で細身、しかもボイン…いしだあゆみにはショーケンが好む必須条件が揃っていた

  4. 4

    おすぎの次はマツコ? 視聴者からは以前から指摘も…「膝に座らされて」フジ元アナ長谷川豊氏の恨み節

  5. 5

    “年収2億円以下”マツコ・デラックスが大女優の事務所に電撃移籍? 事務所社長の“使い込み疑惑”にショック

  1. 6

    歪んだ「NHK愛」を育んだ生い立ち…天下のNHKに就職→自慢のキャリア強制終了で逆恨み

  2. 7

    僕に激昂した闘将・星野監督はトレーナー室のドアを蹴破らんばかりの勢いで入ってきて…

  3. 8

    日本にむしろ逆風…卓球王国中国で相次ぐトップ選手の世界ランキング離脱と進む世代交代

  4. 9

    「(来季の去就は)マコト以外は全員白紙や!」星野監督が全員の前で放った言葉を意気に感じた

  5. 10

    迷走するワークマン…プロ向けに回帰も業界では地位低下、業績回復には厳しい道のり