中国版「百円の恋」大ヒットの裏側…国内の閉塞感加速でエンタメは“手に届く幸せ”にシフト
リメーク版の映画「百円の恋」が中国で大人気を博している。今年の旧正月シーズンの興行ランキングで1位、興行収入約27.24億元(約545億円)を超え、中国でリメークされた日本映画の最高興収記録を塗り替えたのだ。
原作の映画「百円の恋」は、安藤サクラ(38)演じる中年にさしかかったニートの主人公が、ある日ボクシングを始めて、容姿も行動も変わり、人生が好転してゆく“プチサクセス”もの。中国のリメーク作では、ジャー・リン(41)が監督と主演を務めている。
ぽっちゃりキャラだった彼女は1年間露出せず、映画公開とともに50キロの減量した姿で登場したことも一躍話題になった。中国人ジャーナリストの周来友氏は「ジャー・リンは21年の監督デビュー作で広く知られ、その後目立った露出がなかったために“あの人は今?”的な存在になっていました」としてこう続ける。
■閉塞感が広がっていることの表れ
「そうした自身の知名度を逆利用して、あえて1年間メディアに出ないことで作品の注目度を高めた戦略が功を奏しました。作品については中国国内に閉塞感が広がっていることの表れともいえます。中高年世代は、日本の昭和と同じく、頑張ればそれなりの成果を得られましたが、長らく続いたコロナは政府の方針で一方的にロックダウンし、おかげで貯金も果ててしまった。そんな中、国全体は変わらないけれど、自分が努力すれば手に入れられる“手に届く幸せ”が共感を呼んだのだと思います。ヒロインの恋は実っても結婚する気がないところも今どき。中国はいまだマンション、マイカー、貯金がなければ結婚できない。さらに子供ができても教育費が高額で、家のローンと教育費がかさみ、余裕のない未来しか描けないので、“結婚しなくてもいい”という風潮になっています。リメーク作ではそういった中国のリアルな選択も描き、夢が描けなくなった中国に刺さる作品になっているのです」
時代の閉塞感は日本から中国へ。「ダイナミック」で「夢がある」作品が好まれてきた中国エンタメの趣向も変わりつつあるようだ。