血尿を隠して撮影に臨んだ松田優作40歳の死
<1989年11月>
「太陽にほえろ!」(日本テレビ)のジーパン刑事役でブレークし、「探偵物語」(同)や映画「蘇える金狼」などで卓越した演技を披露した“カリスマ”松田優作。そのあまりにも早い死を悼む声は今も多い。
体の不調を訴えるようになったのは88年のことだ。9月27日、「血尿に悩まされていたが、ついに尿が出なくなった」とひとりで都内の病院を訪れた。内視鏡の検査では膀胱の中に血液と尿が混ざった塊ができており、尿は一滴も出ない状態にまでなっていた。血液を取り除くため、尿道を経由して塊を溶かし、切れていた血管を電気凝固で止血。ここで手術はいったん終了したが、松田は1週間ほど入院することになった。
血尿で疑われるのは腎臓がんか膀胱がん。検査の結果、膀胱の上皮内がんで、すでに4分の1くらいが侵されていることが明らかになった。医師は入院5日目にがんを告知したが、松田は覚悟していたのか、「そうですか」と驚いた様子を見せなかった。さらに、妻が悲しむのを見たくないと「自分の病気は人に知らせて欲しくない」と医師に頼んだ。