全盲ドラマー佐藤尋宣さん 網膜色素変性症との38年を語る
「オバチャン、米買いたいからそこまで連れてってくれる?」
20代を過ごした大阪では、買い物に行くとよく店のオッチャン、オバチャンの肩を借りて店内を歩きました。そうすると「ここだけの話やで。米はあした安売りや」と教えてくれるんです(笑い)。
困ったことは何でも周りの人に聞く。それがどんな顔のどんな人かは関係ない。
ボクら全盲の人間は、そばにいる人を頼らざるを得ないんです。でも人と話すと、人のいろんな面が見えてくるから案外、面白いですよ。
「網膜色素変性症」は光を感じる組織の網膜に異常がある、生まれつきの病気です。
物心ついたころから暗いと見えない弱視で、大学進学した頃に全盲になりました。病院へは定期的に通っていましたが、治療する術はなく、視野がどれだけ狭くなったかや、視力がどれだけ落ちたかを検査していただけ。今は太陽ぐらい強い光でやっと明るさを感じる程度です。
小学生時代は、たとえばノートの字は4Bの鉛筆で大きく書けば見えていました。5~6年生になるとフェルトペンじゃないと見えなくなりましたが、目の前の人の表情ぐらいはわかりました。