全盲ドラマー佐藤尋宣さん 網膜色素変性症との38年を語る
結局、墨字入試ができた別の高校に入学し、2年生からは本格的に点字を学ぶため、視覚支援学校に転校しました。
まったく見えなくなったのは、1浪して大学に受かった後でした。ふと気づいたら友達の表情が見えていなかったんです。いつか見えなくなるとは聞かされていましたが、「もう来たか」と思いました。でも、落ち込んだのは3日ぐらいかな(笑い)。
わが家は友達のたまり場で、当たり前のように誰かがいました。彼らは平気で「これ、俺のだから食うなよ。名前書いといたから」と言って、お菓子を置いていったりするんです。こっちは「いや、(書いても)見えねぇし」ってなるんですけどね(笑い)。
■理不尽なことも「ネタになる」と考えれば面白い
そんな環境だったので、人生を悲観することなく青春を謳歌し、10年前には結婚もできましたし、今3歳になる子供もいます。見えなくなって“これが大変”ってことはあんまりないですね。
いや、いろいろあるんですけど「周りにこれだけたくさんの人がいるんだから、誰かが助けてくれるだろう」と思っています。いろんな人を渡っていく人生、こんな生き方もアリなんじゃないかなと。