無理な「在宅」で最期まで“自分らしい暮らし”ができるのか
がん対策の会議に出席するたび、終末期の「在宅」について本当に大丈夫だろうか? と、私はいつも心配しています。
病院では療養型病床は激減し、60日以内退院の在宅支援病棟ができています。老健施設でも在宅復帰率をカウントする時代となり、いまは「時々入院、ほぼ在宅」なのだそうです。
かつて、妻が在宅で私の両親の介護にあたったことがあります。次第に2人とも下の方の世話が必要になる回数が増えました。よく「人間の尊厳」といいますが、老人が自分で排泄をコントロールできなくなった時の情けなさ、自分のプライドを捨てなければならない親も哀れでした。便を廊下にこぼしたり、布団を汚したり……。自分で拭いて洗って済ませようとして、それがかえって周りを汚してしまいました。
妻は頑張りました。一日に何回も老人2人の尻を拭き、食事を用意して……。風呂の時は介護のヘルパーさんが来てくれても、「死んだ方がいい」と言われると、妻もつらくなったといいます。
「施設に勤めている人は8時間の勤務時間で解放される。大変な仕事だけれど、きっとそれで優しくしてあげられるのだと思う。それが2人を在宅で24時間、いつまで続くか分からない。赤ちゃんのおむつを取り替えるのとは違うのよ」