いくら時代が変わろうと「命が一番大事」なのは変わらない
脳が腫瘍で破壊され、長い間まったく意識のない主婦のMさん(60歳)のお見舞いに来た夫のFさんに、担当のR看護師はこんな話をされました。
「そう、うれしいですね。ほら、Mさんは喜んでおられます。体全体がとてもリラックスされていて、気持ちいいと言っていますよ。こんな時、私はMさんから幸せをいただいているのです」
また、医師の高谷清氏は、著書「重い障害を生きるということ」(岩波新書)で、こう述べています。
「脳の形成がなくとも脳が破壊されていても、本人が気持ちよく感じる状態は可能なのだ」
「『生きているのがかわいそうだ』『生きているほうがよいのだろうか』ではなく、『生きていることが快適である』『生きている喜びがある』という状態が可能であり……そのようなことがなされうるように社会的なとりくみをおこなうことが社会の役割であり、人間社会の在りようではないかと思うのである」
ある研修会で、私たちがそうした話をしている頃、相模原市にある障害者施設の元職員が、利用者19人を殺害する事件が起こりました。加害者の元職員は「障害者なんていなくなってしまえ! 日本国と、世界のため」と言ったそうです。この事件は単なる異常な殺人事件なのでしょうか。