「便秘は命に関わる」が世界の常識 複数の海外研究で証明…15年の追跡調査では20%生存率が低い
運動・食事・排便環境の改善が大切
便秘の治療では「出す」ことをゴールとしがち。しかし「いきんで出す」のでは血圧上昇、ひいては循環器疾患のリスクは下げられない。「出たはいいけど、全部出しきれていない」では、CKDのリスクを下げられない可能性がある。
「重要なのは、『迅速、かつ完全に』。そうでない排便は、何よりすっきり感がない」
すっきり排便には、よく知られる通り、ちょうどいい軟らかさのバナナ状の便が理想だ。硬い便はいきまないと出ず、バラバラになるので便のかけらが肛門に残る。一方、薬を使って下痢状にして出す便は、迅速には出るが、直腸が収縮すると便の半分は逆流してしまい、一度に全部出しきれない。バナナ状の便を目指すには、まずは運動、食事、排便環境の改善だ。運動では起床後1時間程度の散歩やジョギングをし、水分をよく取るのが理想。食事は米飯を含む和食が望ましい。
「排便環境では、斜め35度の前かがみの姿勢が最も排便しやすい。トイレに座っただけでは直腸がまっすぐにならず、便が出にくいのです。小柄な方では足元に台を置くと効果的です」
高齢者では大腸運動が低下し、直腸の感覚閾値が低下しているため便意を覚えにくい。また、胆汁酸という成分が便を軟らかくし、便意を覚えやすくする働きをするが、胆汁酸の分泌が便秘の人では少なく、加齢によっても減る。胆汁酸にフォーカスした薬など、今は便秘治療薬がいくつか出ている。
「古くから使われている酸化マグネシウム剤は、高マグネシウム血症を起こすリスクがあり、刺激性下剤は頓服的に使うならいい薬であるものの、常用すると依存性など問題点があります。自己判断で市販薬を使わず、必ず医師に相談してほしい」
便秘は、大腸がんの自覚症状のひとつでもある。それを見逃さないためにも、便秘に悩んでいるなら一度は便秘治療に力を入れる消化器専門医に相談すべきだ。