山田太一さん壮絶リハビリ秘話を担当医が語る「日本を代表する脚本家の凄みを実感」
2023年11月29日に亡くなった脚本家の山田太一さん(享年89)は2017年に脳出血を患い、右半身がマヒ。重症だったが懸命のリハビリに取り組み復帰への意欲を見せていたという。リハビリを支えたのが大泉学園複合施設責任者で、ねりま健育会病院の酒向正春院長だった。
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「うちの病院にいらしたときは軽度の右半身のマヒと、軽度の失語症が残った状態でしたが、とにかく能力が回復することに意欲をみせておられました。退院時には『未公開の本(シナリオ)があるんです』とプレゼントしていただきましたが、出版に至っていないということは、まだご自身で納得できる出来ではなかったのでしょう。それでわたしが復職への再出発のお手伝いをすることになりました。山田さんは当院で1日3時間ものハードなリハビリを意欲的に行うことで日常生活には困らない活動レベルにまで回復されました。医師として、その姿勢はリスペクトするほどです。それでも、その後の年齢による体力の落ち込みは否めません。ご自身の頭の中にはドラマのセリフのような紙一重のヒリヒリする感覚や時代を動かす作品にすることを大切にされていたので、あと一歩が思うようにならない執筆力がもどかしかったのではないかと推察します。リハビリ通院が終わった後“世に作品を出してくださいね”と送り出しましたが“いやあ……”と山田さんはほほ笑んでいました。研ぎ澄まされたセリフや文章は完全には戻らず、しっくりとこない感覚をご自身が一番よくわかっていらっしゃって、自分の作品を許せなかったのかもしれません。一文字一文字を大切にする、日本を代表する脚本家の凄みを実感させていただきました。老衰による大往生だったと思います」 (談)