性犯罪で被害者が誰なのかわからなくなる? その法改正、弁護士は大変です。
今年2月15日、性犯罪などの被害者の氏名や住所その他の個人情報を秘匿することができる規定を盛り込んだ改正刑事訴訟法が施行されました。この改正により、例えば、捜査段階の被疑者に対しては、被害者の氏名などの個人情報が記載されていない逮捕状や勾留状を提示すれば足りることになりました。
性犯罪の被害を受けられた人の立場からすれば、今回の改正によって被害を警察などに申告するハードルが一つ取り除かれることになるわけですから、被害者が声を上げやすくなり、また2次被害などから被害者を保護する結果にもつながるでしょう。
しかし、この改正に問題はないかというと、被疑者・被告人の弁護活動に大きな弊害が出る可能性が指摘されています。
つまり、性犯罪の加害者として逮捕されたのであれば、誰に対する加害を疑われているのかを正確に把握する必要があるでしょう。とくに心当たりがない事件の場合の方がその必要性は高いと思われます。しかし、被疑者だけでなく弁護人にも個人情報の記載のない逮捕状や勾留状しか交付されないのであれば、誰に対する行為が問題になっているか把握できません。それでは事件に関する認識を正確に回答することも難しくなるのではないかと思います。もちろん弁護人としても、詳細な事実確認を行うことができなければ、弁護活動に重大な支障を生じさせることになります。