犬猫の「脾臓トラブル」は獣医師の経験値が試される 症例によって対応に大きな違いあり
■ステロイドを高用量投与
私は幸い治療経験があり、超音波検査でおやと思い、一般的な血液検査のときに免疫学検査に必要な材料も採取しておいて、それを外注しながらまず診断的な治療を行ったのです。それは、免疫の暴走を食い止めるステロイドの高用量投与でした。
前回の脾臓の腫れには点滴が効果的で、開腹手術を回避できる可能性があると書きました。この症例は、破壊された血小板などの処理で脾臓に多大な負荷がかかっているため、点滴は脾臓の負担を増やして逆効果。何とか免疫の暴走を食い止める治療に主眼が置かれるのです。
まだ予断を許さない状況ですが、幸い食欲も少しずつ回復し、快活さも出てきたようです。今後は投与量を減らしながらステロイドを減らしていくことになります。
実はワンちゃんでは輸血が効果的ですが、いろいろな事情で輸血が難しい。ステロイドで思うような改善が見られなければ、脾臓の摘出を余儀なくされることが多くなります。
脾臓のトラブルは症例によって対応が大きく異なり、獣医師の経験値が試されることがよくあります。その意味では、脾臓に異常が見つかったときは、若い獣医師よりベテラン獣医師に診てもらう方がよいかもしれません。
(カーター動物病院・片岡重明院長)