深刻化する後継者不足…J.フロントが3月に始める「事業継承ファンド」の狙いとは?
「経営者の病気や死亡による倒産が最多ですが、コロナ禍から事業承継を諦め、自分の代で終わらせるケースが増え始めています。また、物価高でも価格転嫁、賃金アップできずに優秀な社員がスカウトされ人材不足から倒産するケースも見られます」
同社調査によると社長の平均年齢は60.4歳。次期社長が実際に引き継ぐまでに10年といわれ、高齢の上に業績不振が重なり引き継ぎリスクが大きいことも後継者難の大きな原因だという。そのうえで事業承継ファンドの設立をこう述べる。
「百貨店は全国の老舗ブランドを扱っています。こうした企業が後継者不足で供給できなくなれば商品に魅力がなくなり、自社取引に大きな影響を受ける。特徴ある産業を維持するため、自らファンドを設立し支援していくということでしょう」
ファンドの設立は自らのビジネスを守ることにつながるのだ。百貨店の売り上げの多くは、年間必ず高額商品を購入する外商部門の顧客に賄われている。東レ経営研究所の永井知美チーフアナリストが説明する。
「外商部門は中小企業の裕福なオーナーが多いのですが、こうした富裕層が高齢で後継者に苦労している企業が多いと聞きます。企業がなくなれば商品を扱えなくなるため、オーナーから頼まれてファンドで支援するということも多いと思います」
新たなファンドの設立が地域経済の活性化に貢献することが期待される。
(ジャーナリスト・木野活明)