夢コラボ初上陸! ソニー・ホンダモビリティ「アフィーラ1」にやっぱり期待してしまうワケ
ソニー・ホンダモビリティ「アフィーラ1」
1月下旬、待望の「アフィーラ1」が銀座ソニーパーク屋上に初上陸した。そう、2年前のジャパンモビリティショーで公開されたITの巨人ソニーと自動車のホンダの国産EV夢コラボ、「アフィーラ」ブランドの第1号車である。
厳密には、1月6日に北米ラスベガスCES(テクノロジー見本市)で発表済みで、その北米プロトタイプ版が日本にやってきたのだ。
北米カリフォルニア限定だが、すでにネット受注が始まっており、価格も発表済み。2025年中には北米で正式発売、翌26年には北米納車が始まり、日本でも26年頃に発売予定だ。
正直、まだ動かせないし肝心の車内エンタテインメントも体験できない。ただ、遂に“ソニーホンダのEV”が出るんだという想いもあり、実車を見に行ってみた。
ぶっちゃけ言うと、大成功が約束されたクルマではない。ソニー&ホンダのビッグネームには当然期待だが、デザイン&サイズ戦略は存外にフツー。
全長4.9m強×全幅1.9mのラージセダンサイズは、競合とされるテスラモデルSとほぼ同じ。また今後SUVのアフィーラ2、普及版のアフィーラ3が登場するとも言われ、その辺りの商品戦略もテスラと似た流れと言える。
デザインは刺激は薄め、動力性能は少々期待はずれ
肝心のエクステリアは、プロトタイプそのままの超すっきりオーバルデザイン。なによりもルーフに取り付けられたタクシーの行灯の如きデカいライダー(レーザーで距離や形状を測定するセンサー)やカメラが目立つ。
空力的には優れてそうだが、イタリア車のごとく既存のクルマ美学を追ったものではなく、要するに“走るスマホ”デザイン。ユニークと言えばユニークだが、刺激が薄いと言えば薄い。
動力性能はフツーどころか、少々期待はずれだ。電池素生は明らかにされてないが、91kWhのリチウムイオン電池を搭載し、254psモーターを前後に配したツインモーターAWDで、フル充電からの航続距離は300マイル(483km)以上。
最新のテスラモデルSが約100kWhの電池を積み、最速モデルで1020psを発揮し、ロングレンジモデルで航続距離が600km台であることを考えると、後発なのにそれでいいの? と思わなくもない。
肝心の価格もベーシックなオリジンが8万9900ドル(約1420万円)から、上級のシグネチャーが10万2900ドル(約1630万円)で、北米価格はモデルSと似てるが、日本円に換算すると日本のモデルSより高い。ここまで聞くと戦略的には不安になる。
だが違う。アフィーラ1はテスラはもちろん、既存のEVとは全く違う価値観で勝負するのである。それはいわゆるソフトウェア優先のSDV(ソフトデファインドビークル)戦略であり、もっと言うとソニーならではのデジタルエンタテインメントカーだ。
走る“電脳ソニー劇場”に
まず凄いのはECUの超絶性能で、今後SDVがこぞって搭載する米クアルコム社の最大800TOPS(1秒間に800兆回)の演算能力を持つスナップドラゴンという最新チップを6つも搭載。それも自動運転用に4個 車内エンタメ用に2個と贅沢に使う。
さらに冒頭の高価なライダーセンサー1個だけでなく、車内外に18個のカメラ、9個の他センサー、12個のソナーと合計40個のセンサーを搭載。走るクルマというより、走るコンピューターだ。
何より提供する価値観が違い、アフィーラ インテリジェントドライブなる先進運転機能は、レベル2プラスから将来的にはレベル3に対応するようで期待大だ。
もう一つはソニーならではの走るエンタテインメント空間の創造で、運転席前は全面モニターのパノラミックスクリーンでリアにもビッグモニター2つを搭載可。同時にソニー自慢の360リアリティオーディオやサラウンド効果のドルビーアトモスで、没入感ある立体的な音空間を提供。
オマケにソニーピクチャーズの映画コンテンツやアニメ『鬼滅の刃』の最新作、NFL=ナショナルフットボールリーグからもコンテンツ提供が受けられるらしい。まさに走る“電脳ソニー劇場”になるのだ。
もちろん、それが本当に感動の新デジタルエンタメ空間になるかはわからない。
ただ安い電池素材を大量に中国に握られている今、良品廉価なEVという部分で日本ブランドはほぼ勝負できない。日本でしか生み出せない高付加価値エンタテインメントで行くしかないのも事実なのだ。
ソニーホンダはもちろん、今後日本が本当に新たなデジタル的な移動快楽を作り出せるのか? やっぱりそこに期待したくなっちゃうのである。