ギャンブラーだからできる大借金と自転車操業
「NHKから国民を守る党」(N国党)は一時とはいえ、国政政党に上り詰めた。党首・立花孝志が天才だからではない。要因を一言で言えば、立花の金銭感覚が狂っていることが大きいだろう。
2019年の参院選前、立花は支持者らから約1億円を借り入れたが、当時約束した金利は15%。今のご時世、これほど「おいしい投資」はめったにない。有象無象が飛びついた。立花は「返して欲しいと言われたら、いつでも返す」とのたまい、リスクがないような説明をして、「入ってくる政党助成金は億単位になり、返済は可能だ」と強調した。
そうして借金を参院選に全額投入。全滅した場合の返済リスクは微塵も頭になかった。どうせ他人のカネなんだし、負けたら3年後の参院選でどうにかすると言えばいいだけ。
無責任な男だからこそできる大ギャンブルだった。
結果、立花は勝つ。
惨敗してもおかしくない情勢だったが、選挙戦終盤に京都アニメーション放火殺人事件が発生。犯人が建物内に侵入できたのはNHKが取材中のためだったというデマが流れ、「NHKをぶっ壊す!」をキャッチフレーズにする立花らに猛烈な追い風が吹いた。有史に残る凄惨な事件と、それをめぐるデマがN国党という反社会的カルト集団をモンスターに成長させたのだ。