本田圭佑「虚像と実像」(4)大人を操ったヨイショと作り笑い
■率先して親戚を送迎
ある試合でこんなシーンがあった。兄の同級生でヒロシと呼ばれていた先輩から、なかなか思うようなボールが送られてこず、何度か決定機を逃すことがあった。苛立った本田はヒロシのもとに駆け寄った。作り笑いを浮かべてつぶやいた。
「正確なパスが出せるヒロシ君やからこそ頼めるんやけどな。あの場面では、もうちょっとオレのココんところにボールが欲しいんやけどなあ」
相手の機嫌を損なわないようにし、自分の主張を的確に伝えていく。幼少期から本田を知る大叔父の本田大三郎も言う。
「みんなは圭佑の派手な一面しか知らないでしょうが、彼ほど繊細で周囲に配慮の気持ちを持っている人間はいない。小さい頃から人に助けられて育ち、そのことへの感謝の気持ちを忘れていないからです。親戚で集まる時などは自ら率先して送迎に出たりもする。人の話は控えめな態度で真摯に聞く。本当はみなさんが思い描いている本田像とは真逆なんです」
サッカーを通して「本田の流儀」を身につけていき、あわせて生きていく術をも体得していった。もっとも、中学に進み、ガンバ大阪のジュニアユースに入団すると順調だったサッカー人生が一転した。
(敬称略=つづく)