本田圭佑「虚像と実像」(2)小学生が監督のスネを蹴飛ばした
小学4年。兄・弘幸が入学した摂津第二中のサッカー部に連日通うようになった本田に大きな壁が待ち受けていた。
今でこそ身長182センチ、体重76キロの恵まれた体格だが、当時は同学年の中でも小柄な方だった。体格差を補うため、日本代表のチームメート、香川真司(マンチェスター・ユナイテッドFW)のように動き回ってボールに絡むプレースタイルも模索したが、そこは負けん気の強いサッカー小僧。ひとつのスタイルに納得するはずがなかった。
「どうしたら大きい相手を抜けるようになるんやろ」
この口癖が、いつしか「ボールはオレのもの」という執着心に変わった。
摂津第二中サッカー部顧問だった田中章博(62)は言う。
「常に圭佑は相手を突破することしか考えなかった。<サッカーにはいろいろな快感がある。相手を抜き去る快感もあるけれど、相手が寄せてくる直前にパッと味方にパスを出すのも気持ちのエエもんだよ>と何度も話をした。でも、圭佑はチームプレーでゲームに勝つことよりも、相手を突破する快感を追い求めたんやろうな。ずっと1対1の勝負にこだわったからね」