舞の海も実践 巡業参加の稀勢の里に“見取り稽古”のススメ
まさか「地元のファンに良いところを見せよう」なんて浮ついた考えじゃあるまいが……。
10日、横綱稀勢の里(31)が地元茨城県で行われる興行から、夏巡業に復帰する。
左上腕、左胸のケガはいまだ尾を引き、先場所は左足首も痛めた。横綱審議委員会からは「9月場所は休場して万全の状態で……」という声も上がっているが、この様子では9月場所に強行出場しかねない。
稀勢の里は「稽古をしないと不安」という、稽古依存症。自分ひとり、部屋に残っていることは逆にストレスになるのだろう。だからといって巡業に参加してケガを悪化させたら元も子もない。
角界からは「せめて見取り稽古を中心に、無理はしない方がいい」という声もある。見取り稽古とは相撲のみならず、他のスポーツでも行われている練習法だ。
相撲評論家の中澤潔氏は「昔から『他人の相撲を見るのも稽古』と言います」と、こう話す。
「稽古の順番待ちなどをしている時も、ただボサッと突っ立っているのではなく、他の力士の相撲をよく観察する。これをよく行っていたのが舞の海です。小兵だけに、正面からではなかなか勝てない。そこで相手の取り口をよく研究していた。『同じ変化をするにしても、この相手はこういう取り口だから右側に跳ぼう』など、よく観察し、本場所で実践していた」
稀勢の里は左を差せば勝ち、差せなければ負けという、大ざっぱな力任せの相撲しか出来ない。今後、長く綱を張りたければ、それだけでは限界がある。取り口の幅を広げる意味でも、夏巡業ははやる気持ちをグッとこらえて、見取り稽古にとどめておくべきだ。