反町康治さん<2>パイロットの乗務規定「4・6・10」は絶対
入社後、最初の配属先は羽田空港にある東京乗務員室乗務管理課だった。パイロットのスケジュール管理をする部署だ。
「まずは伊豆山にある研修所で、名刺のもらい方とかタクシーの座る位置とか、社会人としてのイロハを学びました。全日空は接客商売だから、挨拶も大事。分からないときは必ず『なになにですよね』って言い返して確認することも教えられた。同期の連中とは、内定の集まりとかで結構飲んでいたから、すでに仲良かったんだけど、あまり冴えたヤツはいなかったなー」
研修が終わり東京に戻ると、本格的な会社員生活が始まった。毎朝7時に起き、満員の山手線とモノレールを乗り継いで、羽田空港まで通う日々。「ギュウギュウの車両の中でも、朝刊を縦に小さく折りたたんで読んでたよ。あれはすごい発明だ」と笑う。
「管理課では、どのパイロットがどの飛行機に乗ってどの路線を飛ぶか、1カ月単位のスケジュールを決めていくんです。それとは別に、トラブルが発生したときにデーリー作業が加わる。雪で遅延したり、機材が故障したりしたときに、別の乗員を手当てしなきゃいけないケースが出てくるんです。ただし、その際にも絶対に破れないのが『4・6・10』の乗務規定。これはパイロット1人の1日の上限を表した数字で、それぞれ着陸回数、飛行時間、勤務時間を指します。乗員組合との取り決めで、何があってもこれをハミ出しちゃダメだったので、場合によってはデッドヘッド(編注・乗客として搭乗すること)で臨場して帰りだけ乗務するとか、いろんなパターンを考えてアサインしなきゃいけなかったんです」