渡邉彩香5年ぶりツアーVに涙…地獄から生還の軌跡と課題
雑音とプロコーチ
「もともとフェードヒッターですが、プロアマで協会幹部と一緒に回ると、その幹部から『あなた、アドレスが左を向き過ぎよ』とスイングに注文がつく。また、強くなって有名になると、試合会場に出入りするプロコーチと呼ばれる連中が近寄ってきて、あれやこれやとスイングに口を出してくる。そのうちに、自分のスタイルを見失い、昔のフェードボールで飛ばしていた頃の輝きを失っていった」(ゴルフ記者)
最終日は本戦、プレーオフとも18番ティーでは右サイドにティーアップして、持ち球のスライスボールで攻めた。インパクト後にボールが左に飛び出し、キャディーが「右に曲がれ」と言ったことでもわかる。強かった時と同じスライス系の弾道だった。
ジュニア時代から渡邉を指導していた石井明義プロがこう言う。
「ドライバーがひどかった時はインサイド気味に上げて、14ホール中、4、5回しかフェアウエーに行かなかった。フェードを打とうとしてもボールがつかまらず、つかまえようとしているうちにフックボールが出るようになった。そしてダウンでの切り返しでタメがなくなり、安定感がなくなってしまいました。今はドライバーの球筋が一つになって、いいスイングになった。あのゴルフができれば当分の間は大丈夫でしょう」
■フェードを決断
持ち味のドライバーが「気持ちよく打てなかったことが不調の要因だった」という渡邉は、「やっぱりフェードじゃないとダメ」と決断。昨秋から中島規雅コーチの教えで、「オフはどんな状況でも左へ出して右へ曲げるフェードボールを徹底的に練習した」という。
スイングを変えて、元に戻るまでに2、3年かかり、4勝目まで遠回りをした。女子プロは近年、森田理香子、諸見里しのぶなど、トップに立ちながらスイングをいじって消えていった女子プロも少なくない。
渡邉が再びツアーで輝き続けるには、球筋をあれこれ欲張らず、今のスイングを固めることが何よりも大事だろう。