松山3年ぶり米ツアーV逃す…「完璧ゴルフ」追求でカラ回り
一般人には理解できない繊細な感覚の持ち主
もともと松山はゴルフに対して完璧主義であり、神経質な性格というのは、よく知られている。日本で発売されるゴルフ誌にはすべて目を通し、自身のスイングは100分割して一コマ一コマ解説できるほどメカニズムに詳しい。
メーカー担当者が新ドライバーを持参しても、ボールを打つ前にテークバック始動時にソールが芝に触れる感じが嫌だと使わなかったり、シューズもメーカーデザインのロゴマークが視界に入るのを嫌って市販モデルとは違う特注品を履く。一般人には理解できない繊細な感覚の持ち主だ。完璧なプレースタイルを追い求めすぎて、それが空回りしてしまう原因になっていると指摘する声もある。
毎大会、ショット、パットとも万全を期して試合に臨んでいるが、だからといってうまくいくとは限らない。ドライバーは着地点のマウンドによってラフに飛び込むこともあれば、突然吹く風によってイメージしたターゲットとは違う方向へ飛んでいくこともある。
グリーン上は優勝争いの時間帯になると多くの選手の踏み跡で凸凹ができる。狙ったライン通りに打ち出してもカップインしないことがある。
米ツアープロの多くはアンラッキーにも、「そんなこともある」と気持ちの切り替えが早いが、松山の場合、「どうして入らないんだ」と自身を追い込んでしまうのだ。
3日目、4日目と同組で回ったダスティン・ジョンソンとは好対照だ。
ジョンソンは勝った時に派手なガッツポーズを見せることもなければ、痛手になりそうな敗退にも表情を一切変えない。
この日のプレーオフでも、ラームに長いバーディーパットを決められてもポーカーフェースのまま、メンタルは波立っていなかった。
松山はルーキーイヤーから7年連続でトップ30だけのプレーオフ最終戦「ツアー選手権」の出場を決めている。それだけでも偉業であり、「いつメジャーに勝ってもおかしくないプロの一人」と高く評価されている。
「みんな僕のことをフェードヒッターというけど、それは違う」と、デビュー当時のドローボールに磨きをかけるスイング改造に取り組みながら、ドライバー飛距離300ヤード超す選手が多くなった米ツアーで対等に戦っている。松山の唯一の欠点といわれるパッティングも、パターを変えたり、スタンス幅や上半身の前傾角度の試行錯誤を続けている。技術レベルは間違いなく、米ツアーでトップクラスだ。
今大会の成績で松山のフェデックスランクは18位から10位にアップ。プレーオフ最終戦のツアー選手権はハンディキャップ戦になり、ポイントランク1位のD・ジョンソンは10アンダー、2位J・ラームは8アンダーからのスタートになる。そして松山は4アンダーからだ。ジョンソンに6打のハンディを抱えての発進とはいえ、フェデックス王者に与えられるボーナス1500万ドル(約16億円)のチャンスはまだ残っている。
▽松山の話「ショットが最後まで思うようにコントロールできなかった。昨日まで左にいった1番、3番は左がダメなところ。左を嫌がって右へ逃げて思い切り振れなかった。それが最後までアイアンに影響した。パットは不安定だが、落ち着いてできた。ショットを立て直せば上位にいけると思う」