翠富士一成の最大の武器は「肩透かし」技との相性が抜群
24歳・伊勢ケ浜部屋・前頭14枚目
多彩な技を持つ力士でも、四つ相撲なら「寄り切り」、押し相撲なら「押し出し」が決まり手の多くを占める。しかし、翠富士は「肩透かし」を得意技にしている、珍しい力士だ。
前に出てくる相手の肩を押して、前に転ばせるのが肩透かしという技。懐に入り、浅く差した手で半身になりながら引きつけることで、相手を前に出させる。その瞬間、反対側の肩を押すことでバランスを崩すという、相手の力を利用した高度な技だ。同じ伊勢ケ浜一門の親方が言う。
「師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)も肩透かしが得意だったが、弟子ほど多かったわけではない。翠富士はそれこそ、勝った相撲の4回に1回はこの決まり手といっても過言ではない。なぜ、そんなことになるのか、技との相性がいいとしか言えませんよ。翠富士は小兵でも、立ち合いでは真正面から当たる正攻法の押し相撲。出し投げを狙ったり、横から崩しにかかることもあるものの、まずはきちんと当たることを心掛けている。そうした相撲は、付け人をしていた兄弟子の照強譲りですね」
静岡県の飛龍高校卒業後は近大相撲部に所属したが、2年で退学。いったんは故郷に帰るも、伊勢ケ浜親方の説得でプロの世界に飛び込んだ。