(7)三笘の2得点で日本が7大会連続7回目のW杯へ! 本当のサバイバルがこれから始まる
最後の最後で「必殺・ヌルヌルドリブル」がさく裂した。3月24日のカタールW杯最終予選の大一番・オーストラリア戦に挑んだ日本代表は0-0の展開を強いられ、ドロー決着で7大会連続切符獲得は29日のベトナム戦(埼玉)に持ち越しか、と思われた。
そんな終盤に森保一監督が二枚替え。その一人である三笘薫(サン・ジロワーズ)が後半44分、山根視来(川崎)からのマイナスクロスに飛び込み、値千金の先制点をゲット。ロスタイムにも4人のDFをかわしてダメ押し点を奪い、終わってみれば2-0の勝利。敵地未勝利のジンクスも打破した。
■オーストラリアのデジタル化を学ぶべき
決戦当日朝のシドニーは雨模様。日中は降ったり、止んだりで現地午後8時10分(日本時間同6時10分)キックオフ直前から再び大雨に。予想通り、難しい条件下の一戦となった。
この決戦前、筆者は同行カメラマンとともにシドニー空港のPCR検査場に向かった。我々は26日の帰国便搭乗だが、彼は25日夜発。となれば前日のうちに検査を済ませておくのがベターだ。
筆者が18日の到着時に調べておいた出発ゲート外にあるテントの検査場は、事前にオンラインで個人情報の登録と支払いがきる。その方が現地に行った時にスムーズだということだったが、本当にものの数分で終わった。
今回の渡豪に際し、短期労ビザの「サブクラス400」、デジタル・パッセンジャー・ディクリアレーション(DPD)などオンラインの事前登録を繰り返し行ったが、それだけ同国はデジタル化が進んでいるということだ。
現地在住の元日本代表FW田代有三さんも「運転免許や滞在許可証などを複数の必要書類を携帯に入れておけるので非常に便利」と話していた。日本とは雲泥の差。学ぶべきことはやはり多そうだ。
筆者の体調不良は日本代表にとって吉兆
その後、2日前からの虫刺され症状をきちんと治療したいと思い、街中の病院に行った。
年配の男性医師の医療英語はさすがに難しく、全ては理解できなかったが、「ベッドバグがダニか判別が難しいが、治るまでに1カ月くらいかかるかもしれない」と言われて落胆。処方箋を出され、薬局で薬を入手した。総額は1万5000円程度。これは全て海外旅行保険で賄われるので安心だが、イザという時の備えは肝要だ。
海外での体調異変で思い出したのが、過去のW杯決定試合。日本が2006年ドイツ行きを決めた2004年6月の北朝鮮戦(タイ)の際、筆者はバンコクで発熱。病院で点滴を受けた。2010年南アフリカW杯決定試合だった2009年6月のウズベキスタン戦(タシケント)の時も原因不明の下痢と発熱に見舞われた。つまり大一番の筆者の体調不良は吉兆なのだ。そう前向きに考え、意気揚々とスタジアムへ向かった。
キックオフの3時間前からチラホラと観客の姿が見られた。スタジアム・オーストラリアの場合、隣接する立体駐車場に車を停めようとすると早い到着が必須だ。値段は定額で30オーストラリアドル(約2700円)。平均物価が日本の2倍という同国ではリーズナブルな設定なのだろう。
左サイド裏を狙われて再三ピンチに直面
その後、周辺をグルリと回ってみると鉄道駅の近くで日本人サポーター集団と出くわした。彼らはもちろんコロナ禍初の海外応援。「この試合で決めるぞ」と気勢を上げていた。
日本の新エース・伊東純也(ゲンク)のJ2・甲府時代のユニフォームを持参する猛者もいた。彼らのために最終予選5戦連続弾を決めてほしいと強く願った。
そして迎えた試合。日本は前半から主導権を握ったものの、ミスパスをカットされてカウンターを食らう場面が目立った。特に長友佑都(FC東京)と吉田麻也(サンプドリア)の左サイド裏を狙われ、再三のピンチに直面。大柄なフィジカルを生かしたセットプレーにもヒヤリとさせられた。
日本は南野拓実(リバプール)や長友らが相次ぐ決定機を迎えるが、決められない。後半ギアを上げ、猛然と敵陣に向かっていくが、あと一歩が足りない。
引き分けという選択肢も指揮官の脳裏によぎっただろうが、勝負師の男は三笘というカードを切り、技巧派ドリブラーが爆発。ここ一番で采配がズバリ的中。序盤3戦で2敗という崖っぷちから見事に蘇り、カタールW杯に名乗りを挙げたのである。
W杯本番まで再びサバイバルが始まる
「試合が終わった瞬間は、もう『良かったな』と。これでカタール(W杯)まで代表でプレーできると思いました」と、吉田麻也も涙目で安堵感を吐露。ここまで責任を一身に背負い、代表引退まで脳裏をかすめたことがある分、大きな重荷を下したのではないか。
ただ、ここから本番までは再びサバイバルが始まる。吉田や長友らベテラン勢がカタールに行けるとは限らない。長友も「全ての部分でレベルアップしないとW杯8強の大目標を掲げるチームの一員にはなれない」と語気を強めた。
新たなスタートラインに立った森保ジャパン。三笘のようなイキのいい若手が台頭してきた今、本当に生き残りは熾烈極まりない。
ここからの森保監督のマネージメントにも注目していきたい。